オシム本


オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見えるを読み終えました。評判どおり、非常に読み応えのある一冊でした。
はじめは、オシムが就任してからジェフがどのように改革されていったか、あるいは「オシム語録」の総括のようなものを想像していたのですが、どちらかというとイビツァ・オシムその人の自伝に近い内容でした。全体的には、オシムの東欧時代の人物史を千葉での活躍を挟みながら紹介しているという感じでした。佐藤勇人阿部勇樹が登場する舞台はスラスラと読めるものの、東欧時代を振り返る場面では正直なところカタカナの地名と、カタカナの人物を覚えるのに苦慮しました。しかし、この本の中核をなしているのは、その特にオシムのルーツともいうべきサラエボ時代。感銘を受けました。旧ユーゴスラビアを率いた90年イタリア大会の栄光、終わらない民族対立の中で監督を続けていかなければならなかった苦悩と葛藤、内戦で包囲され妻子とさえも分裂させられた2年間・・・。皮肉なユーモアな発言の奥に隠された深い意味も、あらためて考えさせられることになります。知将としては勿論のこと、人物的にも本当に素晴らしい人間で、祖国サラエボではもっとも尊敬されている人物であるといいます。よくぞ日本に、Jリーグに来てくれたと感謝するばかり。
サッカーの好きな全ての方に、あるいはサッカーに全く興味のない方にもお勧めできる一冊です。